皆様のお陰をもちまして盛会の内に終了いたしました。
ご参加、ご支援いただきました皆様に心より厚く御礼申し上げます。
【会期】
特別講演:2021年2月21日(日) ライブ配信 ⇨ご視聴ありがとうございました
演題発表:3月1日(月)~3月21日(日) オンデマンド配信 ⇨ご視聴ありがとうございました
ー特別講演 オンデマンド配信中ー
「発達性協調運動障害とその他の発達障害:学校での生活における困難」
医療法人仁誠会 大湫病院
児童精神科医 関 正樹
協調は様々な感覚入力をまとめあげて、運動制御として出力する一連の脳機能であり、なわとびなどの運動やバスケットボールのドリブルなどのスポーツ場面に限らず、ボタンをかけたり、ゲーム機を扱ったりするなど何気ない日常生活の場面においても使われている。これらの脳機能の発達の問題はDSM-5において発達性協調運動症(DCD;Developmental Coordination Disorder)として記載されている。
DCDは協調運動技能の獲得や遂行に困難があり、過度な不器用さや運動の遂行の遅さ、不正確さなどから日常生活に支障をきたすとされており、その有病率は5-6%と決して稀ではない。しかし、一般には「不器用さ」を主訴に医療機関を受診することは少なく、自閉スペクトラム症(ASD;Autism Spectrum Disorder)や注意欠如・多動症(ADHD;Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の診断の過程でDCDの存在に気づかれることが多い。ASDにおいては手指の巧緻性と社会・コミュニケーションとの関連が指摘をされており、ADHDにおいては不注意優勢型において58%にDCDが併存する(可能性も含む)との報告もあり(Pitcher et.al,2003)、その不注意の特性との関連が注目をされている。
DCDの併存は学校場面においては、体育活動の苦手さや図工の苦手さ、書字の困難、学習の困難、ドッチボールなどの余暇活動への参加の困難などに現れ、叱責やいじめ、不適切養育などから自尊感情の低下につながり(Nakai,2011)、集団への回避に繋がることが考えられる。療育的なアプローチや介入には効果があるが、それとともに不器用な子どもや学習が苦手な子どもたちの背景にDCDがあるかもしれないという視点を持ち、周囲への心理社会教育的な啓発を行なっていくことは、DCDを有する子どもの自尊感情やQOLの向上につながるものと考えられる。
<略歴>
関正樹:1977年生まれ。児童精神科医。 福井医科大学医学部卒業後、岐阜大学医学部付属病院、土岐市立総合病院 精神科を経て、現在は大湫病院に勤務。 岐阜県東濃地方の地域の児童精神科医として、発達障害や不登校の診療にあたるとともに、 地域における発達障害の啓発活動や療育施設の座談会などに出席し、家族支援を行っている。著書に『発達障害をめぐる世界の話をしよう:よくある99の質問と9つのコラム』(批評社)など